中里恒子展 物語のこころ

絵=毛利家伝来能衣装 縫箔紅地扇子鉄線(野田神社蔵)
写真提供=文芸春秋
中里恒子は、1909年(明治42)に藤沢に生まれ、少女時代を横浜で過ごし、その後は逗子を終生の地とするなど神奈川をこよなく愛した作家です。1939年(昭和14)に国際結婚の明暗を描いた「乗合馬車」「日光室」で女性として初めての芥川賞を受賞しましたが、このテーマは、実兄、義兄、一人娘と身内に3組の国際結婚を体験した作者にとって、生涯追求すべきものとなり、“まりあんぬもの”と呼ばれる一連のユニークな作品世界として完結しました。一方、1970年代以降は、「時雨の記」、「歌枕」、「誰袖草」、「綾の鼓 いすぱにやの土」など陰影のある筆致で古典を思わせるような物語世界を描き続け、読売文学賞、女流文学賞などを受賞、新たな境地を開きました。本展は、令嬢のスクリブナー・圭さんから当館に寄贈された資料を中心に、多数の原稿・草稿、横光利一、川端康成ら師友との書簡、書画、さらに作品ゆかりの小林古径画「清姫下図」絵巻をはじめとして、岡鹿之助、朝井閑右衛門らの絵画や愛蔵品によって、中里恒子の生涯とその豊穣な文学世界を多角的に構成する初めての展覧会です。
【会期】
1989年(平成元年)4月15日(土)~5月21日(日)
【観覧料】
一般300円(210円)、学生150円(100円)*( )内は20名以上の団体料金
【編集委員】
宇野千代、永井龍男、巌谷大四
【主催】
県立神奈川近代文学館、財団法人神奈川文学振興会
お問い合わせ
公益財団法人神奈川文学振興会
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