収蔵コレクション展3「尾崎一雄文庫」

写真=秋山庄太郎
尾崎一雄は1899年(明治32)に、祖父の代で37代を数える小田原・下曽我の宗我神社の神官の家に生まれました。小田原中学在学中に読んだ志賀直哉の「大津順吉」に強い感銘を受け、作家を志す契機となり、早稲田高等学院から早稲田大学国文科へと進学、この間、数々の同人雑誌や「早稲田文学」に作品を発表していきます。長い雌伏の時代を経た1937年(昭和12)、短篇集『暢気眼鏡』で第5回芥川賞を受賞。1944年に病気療養のため父祖の地・下曽我に帰郷して以後は「虫のいろいろ」「まぼろしの記」など数多くの心境小説、自伝的作品を生み出していきます。晩年には長大な自伝的文壇史「あの日この日」を完結して、83年の生涯の最後まで衰えることのない筆力を示しました。
尾崎は高校時代から稀覯書を蒐集しており、友人達の間でその目利きぶりは有名でした。以後、自身が主宰した「主潮」「文芸城」などの同人誌、斎藤茂吉『赤光』、萩原朔太郎『月に吠える』など同時代の作家の貴重書、師・志賀直哉の全著作や手入れのある「白樺」などのコレクションが累々と築かれていきました。尾崎は1982年に当館の名誉館長に就任、没後に松枝夫人から原稿、書画、井伏鱒二・太宰治など知友からの書簡など4万6000点もの貴重資料を寄贈いただきました。本展は、この中から尾崎と同時代の作家の自筆資料・書簡・稀覯書など120点を厳選し昭和文壇史に遺したその足跡を偲びます。
【会期】
2000年(平成12年)2月19日(土)~4月16日(日)
【観覧料】
大人250円(150円)、学生150円(100円)、65歳以上・高校生以下無料*( )内は20名以上の団体料金
【主催】
県立神奈川近代文学館、財団法人神奈川文学振興会
お問い合わせ
公益財団法人神奈川文学振興会
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