スポット展示「広津和郎と絵画~近年の収蔵資料を中心に~」

広津和郎 1955年

1955年 熱海の自宅で 愛蔵の美術品に囲まれた広津和郎

 敗戦後の混乱時に起きた松川事件を究明した『松川裁判』や、同時代の文学者を活写した文壇史『年月のあしおと』などで知られる作家・広津和郎(1891~1968)は、2018年で没後50年となります。 「雨」などの悲惨小説で知られるその父・柳浪(りゅうろう)(1861~1928 没後90年)、「石蕗の花」で女流文学賞を受賞した長女・桃子(1918~1988 生誕100年)と、親子三代にわたって文学の道を歩みました。 和郎は、若いころ画家を志したことがあり、文学者として活躍しながら足繁く画廊や古美術店を訪れ絵画や骨董を蒐集するなど晩年まで美術に親しみました。画家たちとの親交も深く、彼等から贈られた絵画も愛蔵し、その蒐集の模様は当時の新聞や雑誌でしばしばとりあげられました。

 桃子没後広津家の継承者がなく、広津家資料の散逸を防ぐために桃子の知友が中心となって尽力された結果、1995年に広津家の文学資料が当館に寄贈されました。当館ではそれら7,000点余の資料を広津柳浪・和郎・桃子文庫として保存し、同時に広津和郎・桃子の著作権を継承することになりました。

 文学資料以外の美術品については、絵画は平塚市美術館へ、陶磁器類は神奈川県立歴史博物館へ収められましたが、その際何点かの絵画については所在が不明となっていました。2016年、それらを保管していた桃子の友人のご遺族から、和郎旧蔵絵画のなかでも重要な位置を占めていた中村彝(つね)、安井曾太郎などの作品が当館に寄贈されました。  

 本年、広津家三代のメモリアルイヤーを迎えるにあたり、これら新収蔵の絵画と、和郎と画家たちとの交流を示す書簡、和郎自身が描いた絵画を中心に、関連する図書、雑誌、印刷物、写真等とあわせて約70点の資料を展示します。

【会期】    2018年(平成30)12月8日(土)~2019年1月20日(日)

休館日:月曜日(12月24日と1月14日は開館)、12月28日(金)~1月4日(金)
※同時開催=常設展「文学の森へ 神奈川と作家たち 第3部 太宰治、三島由紀夫から現代まで」→詳細
【開館時間】
午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)
【会場】
神奈川近代文学館第3展示室
【観覧料】
一般250円(150円)、20歳未満及び学生150円(100円)、65歳以上・高校生100円、中学生以下無料
*(  )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方は無料(詳しくはお問い合わせください)
【主催】
県立神奈川近代文学館、公益財団法人神奈川文学振興会

【主な出品資料】
・中村彝画       「画室の庭」(1918年頃 油彩)
・安井曾太郎画    「湯河原風景」(1951年 パステル)
・高畠達四郎画    「広津和郎像」(1956年 鉛筆)
・高木背水画      「池の辺」(1932年 油彩)、「広津柳浪像」(1935年 油彩)
・広津和郎画       無題(青山付近の木立)(1913年 油彩)
・安井曾太郎、高畠達四郎、鍋井克之ほか 広津和郎宛書簡

 

お問い合わせ

公益財団法人神奈川文学振興会
231-0862 横浜市中区山手町110 県立神奈川近代文学館内
TEL045-622-6666  FAX045-623-4841

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